第25回「成都」〜健児物語〜

何の帰りであっただろうか、ラーメン屋、定食屋が、たくさんある中に、それほど目立ったお店ではないが、たいそうおいしそうな店があった。はじめから、「あそこの店に行く」と思っていた田野倉は、こんな早稲田通りからはずれたお店に不満たらたら。田野倉が行きたいと思っていたお店と同等の店、もしくはそれ以下の店に行きたいと思っていなかった他のものたちは、まして「うまそうな店だな」と安心した。朝夕の飯につけても、自分の行きたい店に行けず、そのストレスがつもり重なった結果であろうか、ひどく空腹になっていき、なんとなく心細そうで秋葉原に通っていることが多いのを、他のものたちは、ますます腹が減って、田野倉の非難に対しても、気兼ねすることもせず、すぐに店に入ってしまった。

おいしそうな麻婆豆腐や回鍋肉などを見ても、「中華料理はいろいろな皿をちょっとずつ食うもんなんだよな。これじゃ・・・」と、独り言をつぶやいている。中国でも、「中華料理はな・・・」などといって、店主とけんかになり、よくないこともあったのだが、しだいに早稲田界隈のお店もにがにがしく思うようになり、田野倉の悩みの種になって、あまつの前例まで引き合いに出してしまいそうになっていくので、大変たまらない思いをすることが多いけれど、頼んだ酢豚や餃子などがもったいないので、またとないほど安いのを頼みにして、早稲田通いをしていらっしゃる。

田野倉好みの、早稲田の店はだんだん減ってきていて、最近出来てきている店は、今風で、おしゃれで、きれいな感じがしているが、現在のところ世の評判のはなやかなお店にも見劣りしないように、早稲田の店はがんばってきてはいるが、格別に、しっかりしたファンドのうしろだてがなかったので、田野倉は、最近の買収合戦の時には、やはり頼りなく心細そうである。

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