第9回「ライフ」〜食して止まん〜


戦時中、「打ちてし止まん」の標語がはやっていたが、我々プロジェクトチームは、戦前より、「食して止まん(食って食って食いまくれ)」をモットーにやってきた。前回の「あまつ」で、服部、田野倉以外は全員負傷。そん中、今回の敵は、「ライフ」の肉丼。肉丼には、普通盛のほかに、中盛、大盛があり、大盛の総重量は2s。我々プロジェクトチームでは誰一人として食べきったものはいない。田野倉でさえ、中盛を食ったのみだ。しかも、誰一人として大盛を食いきった人間を見たことさえない。これまで大食いによわいのではとの疑惑を受けていた服部は、一気に名誉挽回すべくこの「ライフ」の肉丼の大盛に挑戦することを決めた。大盛に挑戦するには、それなりの覚悟が必要だと、わざわざ三時限目の授業を切ることにした。というのは、プロジェクトチームの一員ではないが、フリーで大食いに挑戦している菅原という人間が大盛を食いきるのに、2時間をかけたという情報を田野倉が得ていたからだ。昼飯の時間だけでは、食べきれないのでは・・・その不安のあった服部は三時限目の授業をカットしたのだ。


店の前に行って、店の前にあるサンプルを見て絶句をするものがいた。田野倉だ。彼は以前中盛を制覇したが、中盛でさえ、かなりきついという。彼はその悪夢を思い出していた。「服部。やめておけ。お前には無理だ。」と田野倉は言った。服部も、「今日、朝飯食っていて、あまり腹減ってないんだよね。『キッチンミキ』行かない?この前テレビ出てたし」と弱気になっていた。そこで「キッチンミキ」に向かい歩き始めたが、生協の前の通りから、グランド坂へと降りる階段のところで、服部は足が止まった。服部は「しかし、ここで逃げたら現場を離れるしかない。」と言って、引き返して、先に店に入ってしまった。田野倉はしぶしぶ服部についていった。


店に入ると、苦しんでいる学生がいる。おそらく大盛を頼んだのだろう。店には、肉丼の大盛は950円。並盛の三倍と書いてある。早稲田名物と書いてある。それにしても早稲田は名物が多い。



しかも、お一人で食べきれない場合、950円が1800円になるという。それでも服部は躊躇せず大盛を頼んだ。田野倉は中盛を頼んだ。



来た。これは多い。なんというボリュームだ。というか、もっと大きいどんぶりを採用したほうがいいのではと思ったが、なんとこれは中盛らしい。「これはまずい。よもやすると、今回も負けか」服部は、そこはかとなく恐怖を感じた。「大盛はまだか。どの程度のものなのか」



大盛が来た。「これはやばい。」と服部はつぶやいた。恐怖で手が震え、写真がぶれている。するとさっきの苦しんでいた、学生のほうから、「あれはすごい」という声が聞こえた。彼らは大盛ではなく、中盛で苦しんでいたのだ。それもかれこれ一時間も食べているようだ。



服部は一気に食べ始めた。すごいペースだ。大食いは時間が経つと血糖値が上がり、苦しくなるからだ。時間をかけずに一気に食う、短期決戦。これが大食いのおきてだ。服部らは、これまでの研究の成果を存分に発揮しようとした。ちなみに、この大盛を5分で食いきったものがいるという。だが、残り一人前と少しになったところで、はしがとまった。かなり苦しい。もう限界かと思ったそのとき、壁に一枚のペナントが飾ってあった。「早稲田大学創立100周年記念」。「俺の生まれたときじゃないか。」服部は早稲田魂を思い出した。

このままでは、絶対にやばい。そう思った服部は、究極の手を使うことにした。それは服部が早稲田に入り学んだ、数少ないものののひとつである。服部は自主的にボミット中枢をコントロールできるのだ。一年次に度重なる飲み会に対応すべく身に着けた技だ。服部は一気に復活。しかも、あの前の通りではよくビラを配っている人がいるが、たまたまさっき昼食時に、服部の大食いを見ていたビラ配りの人が「食べ終わりました?がんばってください」と声までかけてくれたために、服部は一気に食べ続けた。。

残りわずかになり、服部のはしが再び止まった。腹がいっぱいだからではなく、まもなく食い終わるという感慨深さのためだ。

ついに完食。しかし、店の店主から「外に深呼吸しに行ってから、ずいぶん食えるようになったな」と言われた。おそらくばれていたのだろう。服部自身、食べ終わったとはいえ、明らかに不正。全て食い終わってらのボミットは不正ではないが、途中でのボミットは不正に当たる。服部は本部によばれることを覚悟した。「俺に大食いはもう無理だ」。服部はついに現場から離れることを覚悟した。そのとき、イスラエルののりよし部長から電報が来た。
「サッコンノ ジョウキョウヲ カンガミルニ、 ソノシュシ イササカ タイギヲ ウシナウニ アタヒス」
服部は目が覚めた。このプロジェクトは「早稲田の店を制覇する」であり、「大食い」ではないのだということを思い出した。服部は、早速本部に電話した。本部は「ようやく気づいたか。我々が君を解任しようと思った理由は大食いに負けているからではなく、本来の趣旨を忘れていたからだよ。大食いもいいが、本来の目的を忘れないでくれ。」
服部は現場に残れることになった。

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送