第8回「あまつ」〜早稲田の盛が芽吹く頃・・・〜



我々プロジェクトチームは、この日、早慶戦の第一戦に勝利したが、二連勝をすべく、「ライフ」を制覇してやろうと殺気立っていた。しかし、「ライフ」がしまっていたため、しぶしぶ「あまつ」に行くことになった。これぞ早稲田の中華料理屋と言いたくなる「あまつ」。もともと量が多いが、その上に、大盛、特盛、そして早稲田盛というのがある。大盛だと、2倍、特盛だと3倍。早稲田盛だと、4倍はあろうかという量。大盛でさえ、よほど腹が減っていないと挑戦してはいけないという人さえいる。とにかく腹が膨れるということで、これまで多くの早稲田生が挑戦してきた。



しかし、店の前に行って驚いた。なんとその日が土曜日で、月曜日に閉店と書いてある。これには驚いた。危うく早稲田盛に挑戦する機会を失うところだった。われわれは「ライフ」にまさに命を救われた。すると店の店主が、「大隈盛があるよ」という。「早稲田盛じゃないんですか」と問うと、どうやら、閉店サービスで大隈盛をやっているらしい。早稲田盛を超えた大隈盛だという。男たちの挑戦がはじまった。

この日のメンバーは、現場主任服部、情報部田野倉、外商部小野寺、そして物品管理部の藤井の四人だった。四人はそれぞれ、マーボー丼、五目チャーハン、ホイコーロー丼、五目タン麺を頼んだ。もちろん全て大隈盛である。



四人は勢いよく食べ始めた。しかし、食っても食っても量が減らない。特に麺を頼んだ藤井は不利だ。容赦なく麺が延びる。また、マーボーの服部が、それが四川風で山椒がしっかりと利いていたため、非常に手こずった。同じものを食べ続けては、全員食い倒れだ。四人は食べるものを変えながら、食べ続けた。

しかし、四人を以ってしても、量が減らない。そこで応援を呼ぶことにした。まず、海外事業部で勤務経験のある熊谷を呼んだ。さらに図書館で研究をしていた山中も呼び出した。この二人でもほとんど減らない。何とか、チャーハンとタン麺は食べ終わったが、ホイコーローとマーボーは手ごわかった。ホイコーローを何とか食べ終えたところで、もはや誰も挑戦する力が残っていなかった。田野倉は、「店の雰囲気が、視覚、嗅覚、聴覚、その全てを通して、ボミット中枢を刺激する」と語っていた。小野寺は、今にもボミットしそうになり、店の外の木の下で倒れていた。

服部が何とかマーボー丼を残り一人前にしたところ、店の店主が、「タレが足りないでしょう?」と言って、マーボーを補充してくれることになった。服部は助かったと思った。というのは、マーボー丼は、ご飯が多すぎて、ほとんど「マーボー風味ご飯」になっていたからだ。しかもさめていたために、決してうまいとは言えなかった。これでおいしくなると思ったのもつかの間、なんとマーボーではなく、エビチリソースがかかって出てきた。それもどんぶりいっぱいにである。ごはんはほとんで沈んでいて、もはや、エビチリリゾットであった。服部はそれを見た瞬間に食欲を失ったが、店主は「今度はご飯が足りないね」と言って、さらにご飯を足した。もはや、メンバーにそれを食べきる余裕はなかった。

そこで、新宿から大藤を呼び出した。
大藤はひたすら食べ続けた。他のものは、ボミット中枢が刺激されるため、全員外で待機した。大藤はかなり食べたが、どうやら限界のようだった。そこで現場副主任から、本部の研究所に移っていた西川が駆けつけ、プロジェクトは成功に終わった。

この次の日の早慶戦は、我々の努力が実り、二連勝を成し遂げた。四年生最後の早慶戦のため、ステージに上がって肩を組みながら、「都の西北」を歌っていたが、「集まり散じて」のところで涙が出てきた。応援部も一般の学生の多くも涙を流していた。「あまつ」の思い出は、あの早慶戦の涙と共に、プロジェクトチームの心に永く残るであろう。

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