「山パンマスターへの道(中)」


 さて、山パンのバイトをやろうやろう思っていたら、『和解vol.2』の執筆で忙しく、中々小平まで行くことができなかったのでもう山パンバイトをあきらめていたら、部屋を掃除しているとき、後輩の川端くんの小説が出てきてこんな一説があった。

 国境の長いトンネルを抜けるとそこは小平であった。頭の中が白くなった。信号所に汽車が止まった。

どうやら川端くんも山パンをやっていたようだ。
 私はその後、原稿執筆のために各地を転々としたが、そこで山パンについていろいろ話を聞いた。そこで聞いた話によると、

「あれはありえない。肉まん4袋を箱に入れる作業を4時間やらされた。もう限界と思ったら、社員が『仕事変えてあげるよ』っていって、よろこんでいたら、なんと肉まんがあんまんにかわっただけでさ。」

と言っていた。そして最後に「1度はやっとけ」と誇らしげに言っていた。ちなみに彼は早稲田の6年生だった。
 早稲田の先輩に言われた以上、これはやらなくてはいけない。しかしこの青年以外はみな声をそろえて「やめておけ」という。友人の武者小路くんに聞いたら、

「俺は執筆で少し忙しいから、君一人で言ってきてくれ。」

と言った。何を書いているのかと見ると『新・友情』と書いてある。その時、彼との友情とはこの程度のものかと思ったが、一言、

「八時間、釜のあずきをかき混ぜるだけの仕事をやらされたやつがいるらしい」

と僕に忠告した。しかし彼は、

「山パンが『つらいらしい』では駄目だ。実際にやって『つらい』と言えなきゃ駄目だ」

とまるで真理先生(☆5) のような口ぶりでいわれ、結局私は一人で小平に行くことになった。



☆5:武者小路著『真理先生』に出てくる先生。本名、村野真。


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